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レ・ミゼラブル(2019年版)(ネタバレ)

<2020年6月6日に綴る、あなたのための前書き>


こんなブログにこの映画の感想を読みに来た時点で、あなたは「結構な映画好き」の方だとお見受けいたします。それを踏まえて、もしまだ本作を観ていなくて、暴力的な作品が大丈夫な人ならば、こんなネタバレ全開の駄文を読まずに、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が解除されて営業が再開した映画館でぜひ観てほしいのです。本作はそれほど「衝撃の展開がーッ!(°д°;) ゲェーッ!」という作品ではないものの、とはいえ、ネタバレを知らないで観た方が絶対面白いし、間違いなく「今、観るべき映画」なのでね、まぁ、「トレーニングデイ」とか「エンド・オブ・ウォッチ」などを観るぐらいの気持ちで劇場に足を運んでいただければ幸いです。ちなみに僕的には現在、今年のベスト5に入れるぐらい好きです (´ε`) ウッフン









レ・ミゼラブル(2019)

原題:Les miserables
2019/フランス 上映時間104分
監督・脚本:ラジ・リ
脚本:ジョルダーノ・ジェデルリーニ、アレクシス・マネンティ
撮影:ジュリアン・プパール
編集:フローラ・ボルピエール
音楽:ピンク・ノイズ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、イッサ・ペリカ、アル=ハサン・リ、スティーブ・ティアンチュー、ジャンヌ・バリバール、アルマミ・カヌーテ、ニザール・ベン・ファトゥマ
パンフレット:★★★★(820円/3本のコラムとキーワード解説が入ってて、映画の補完にオススメ)
(あらすじ)
パリ郊外に位置するモンフェルメイユの警察署。地方出身のステファンが犯罪防止班に新しく加わることとなった。知的で自制心のあるステファンは、未成年に対して粗暴な言動をとる気性の荒いクリス、警官である自分の力を信じて疑わないグワダとともにパトロールを開始する。そんな中、ステファンたちは複数のグループが緊張関係にあることを察知するが、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事から、事態は取り返しのつかない大きな騒動へと発展してしまう。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




97点


本日、2020年6月6日(土)、都内のほとんどの映画館の営業が再開されている…ということで! すぐに観られる作品の感想をアップしておきますね。今年の2月下旬公開なのに「2020年2月公開で観たい映画の覚え書き」でまったく触れていないように、観る気ゼロだったんですけれども。3月2日にTwitterを相互フォローしている「ヘソが無くて何が悪い」さんから「三角絞めさんなら絶対気に入ると思います!!」とプッシュされまして。さらに愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の「リスナー枠」に入ったのでね、「付き合いだしな (゚⊿゚) シカタナシ」と観ることに決定した…という、ありがちなパターン。

ということで、4月2日(木)、横浜のシネマ・ジャック&ベティメンズデー割引を利用して、「山中静夫氏の尊厳死」「わたしは分断を許さない」「娘は戦場で生まれた」と連続鑑賞いたしました(その後、そのまま「TRAVERSE トラバース」「9人の翻訳家 囚われたベストセラ−」をハシゴ)。「これで終いかよ!! Σ(°д°;) マジ!?」と思ったり。つーか、ここからネタバレ全開で感想を書きますけど、ああん、ごめんなさい、昨日から今日にかけて徹夜で観たばかりのドラマ版「ウォッチメン」のネタバレにも触れちゃうので、両方観ている方以外はこのページをさっさと閉じて、どっちも観てから読んで!m9`Д´) ビシッ


4月2日の飲食はすべてジャック&ベティで購入。スクリーン・ジャック、10人程度でしたよ。
2020年4月2日の横浜

鑑賞直後の僕の気持ちを代弁する加藤清澄を貼っておきますね(「グラップラー刃牙」より)。
これで終いかよ!!


最初に若干のウソを交えながら適当にあらすじを書いておきますと。超有名な文学作品「レ・ミゼラブル」(フランス語で「惨めな人々」という意味)の舞台になったフランスはパリ郊外に位置するモンフェルメイユの警察署に、地方出身の“真面目刑事(デカ)”ステファン(ダミアン・ボナール)が赴任しまして。レ・ボスケ団地を管轄する犯罪対策班(BAC)に加わってみれば、「ポマード」なんて冴えないあだ名を付けられた上に、“荒くれ刑事(デカ)”のクリス(アレクシス・マネンティ)とグワダ(ジェブリル・ゾンガ)のパトロール振りが市民への威圧感全開すぎてゲンナリですよ ('A`) ゲンナリ そんな中、団地の不良少年イッサ(イッサ・ペリカ)が「ロマのサーカス団」の子ライオンを盗んだため、ロマたちが団地に襲来→団地を仕切るギャング“市長”(スティーブ・ティアンチュー)の一派と一触即発になり、犯罪対策班はイッサを探すことになるのです。


荒れまくっている地域に赴任してきたステファンが「一応の主人公」でして。
赴任してきた刑事ステファン

クズ刑事たちと一緒に子ライオンを探すことになるんですね。
ライオンを探せ!


本編の取り締まりシーン↓ 日本ではここまでクズな警官はいないと信じたい…。




で、何とかイッサを見つけたものの、周囲のガキどもがギャーギャー騒いだりして混乱状態になった時、グワダがイッサにゴム弾を発砲! イッサが昏倒する様子をドローン少年バズ(アル=ハサン・リが撮影していたため、今度はその撮影データが入ったSDカードを巡ってBACの3人と市長一派とのチェイスがスタートすると、最終的には“昔はワルだったけど今は真面目”が売りの「ムスリム同胞団」とボスのサラー(アルマミ・カヌーテ)がバズを匿うんですが…。2005年の暴動みたいになったら大変だよ (´・ω・)(・ω・`) ソウネ」という真心を込めた説得により、サラーはSDカードをステファンに渡すんですね。結局、至近距離で顔面にゴム弾を食らったイッサは何とか生きていたものの、怒りが収まらないロマのボスにライオンと同じ檻に入れられて失禁したりと、さらに散々な目に遭ってから、「撃たれたこと」は「なかったこと」になって解放されたのでした。


「警官が少年を撃つ」という衝撃的な映像を巡って、争奪戦が始まるのです。
動画があれば警察を潰せる!

ポマードによる必死の説得により、発砲動画は回収できたんですが…。
ポマードの説得


その後、実は「ゴム弾用の銃での誤射は構造上あり得ない」ということで、ステファンが2人きりでグワダを問いつめてみれば、「ムシャクシャしてやった。今は反省している (´・ω・`) ホントダヨ」ってな返答。とはいえ、団地には平和が戻った…と思いきや、イッサ feet.子どもたちが、イッサの件を「なかったこと」にしようとした大人たち全員を計画的に襲撃! BACの3人も罠にかかってしまい、団地内で窮地に陥る中、階段の上から火炎瓶を投げようとするイッサをステファンがテーザー銃で撃つかどうか迷った瞬間、いしだあゆみさんが「あなたなら、どうする? 川 ゚д゚)」と歌ったところで画面が暗転。 「友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない。育てる者が悪いだけだ」 なんて「レ・ミゼラブル」からの引用がテロップで出て、映画は終わってたんじゃないかしらん。


ここで、ここで映画は終わってしまうのです… (`Δ´;) ドウスレバ...
火炎瓶を持つ少年


ううむ、確かにスゴいというか。ラジ・リ監督は、映画の舞台となるモンフェルメイユ地区で育ったアフリカ系移民であり、「2005年パリ郊外暴動事件」についてのドキュメンタリーを撮って頭角を現したという筋金入りの男なだけに、舞台となる貧困団地の描写がとにかくリアルで、それだけでも感心するんですが…。逆に犯罪対策班の3人を演じた役者さんたちは「役者さんだな」感がある人ばかりなので、雰囲気的には「トレーニングデイ」とか「エンド・オブ・ウォッチ」っぽくて、意外と取っ付きやすい印象。描かれることも「善良な新入りがトンデモ地域巡りをする」というよくあるパターンなので(って、ステファンはのどかな地域にいただけで、ちゃんと経験は積んできているんですがー)、観客的にはステファン目線で地域の事情やら状況やらを説明されるから、映画としてスゲーわかりやすいし、これで終いかよ!! Σ(°д°;) マジ!?と思わされる凄まじいキレ味のラストも最高で、テーマがヘビーな割にはエンタメ的な面白さがしっかりあるんですよね。あの「パラサイト 半地下の家族」カンヌでパルムドールを争ったというのも納得というか、僕的にはこっちの方が好きでしたねぇ (´∀`) スキヨ


鑑賞直後はマジでこんな気持ちになるんですよね…。




で、そのテーマの見せ方も素晴らしい。本作の問題提起はいくつかあって。例えば、「警察による暴力」とか「貧困による治安悪化」とかについて考えさせられるのはもちろんなんですけど(特に最近発生した「米黒人男性拘束死事件」とか「クルド人暴行事件」とかは間違いなく連想すると思う)、それ以上に「『なかったこと』にする大人たち」の問題を扱っているんですよね。終盤、本作ではマトモな大人として描かれていたステファンすらも攻撃対象に入ってしまうのは、結局は彼だって「子どもたちを舐めてる」からなんですよ、残念ながら。もちろんイッサがやったことも悪いけど、「ゴム弾発砲」というどう考えても過剰な攻撃を「なかったこと」にするのは超ズルイし(まぁ、ステファンも最初は「ちゃんと報告しよう派」でしたがー)、ステファンみたいな奴に「君の怒りは分かるけど、今はガマンするしかないよ ( ´_ゝ`)」みたいなこと言われたってさ、被害者側からすれば、その「なぁなぁ」の不正義を何度ガマンすればいいんだよって。確か「アフター6ジャンクション」で紹介されたのがキッカケになって、少し前に「私たちにはことばが必要だ」というフェミニズム関連の本を読んだんですが、そこで著者が訴えていたことと一緒というか。そもそもの怒りの原因を作ったのは社会のマジョリティ側(本作では「大人たち」)なんだから、てめえらがしたり顔でこっちに「ガマンしろ」なんて言ってくるんじゃねぇよ…ってな話なんですよね、たぶん。


劇中の少年たちからすると、この愚地克巳気分だったんでしょうな…という伝わりにくい例え(「範馬刃牙」より)。
そーゆーのなめてるっていうんだよ


これって、自分に当てはめると難しいとは思うんですよ。例えば、家族が些細な罪を犯した時、それをスムースに告発するかといったら、かなり悩ましいじゃないですか…。ただ、社会正義や政治にまつわることについては、どう考えても「なかったこと」にするのはナシなんじゃないかなぁと。現在、幻冬舎と箕輪厚介さんが下請けに対するパワハラ&セクハラを「なかったこと」にしようと全力で頑張っているようですが、こういうのってバレた時点で“人間としての信用度”へのダメージが半端ないし、「『なかったこと』にしたことで得た成功体験」って間違いなく人間をクズにしていくし、その周囲への影響も良くないと思うんですよね…(だって、そんなことがまかり通る世の中なんて、バカバカしいものね)。昨日から今日にかけて観たドラマ版「ウォッチメン」(超面白い!)が、「愚民どもには黙っておこう」という原作の(良い意味で)モヤッとしていたラストをクリアにしてくれたこともあって、余計に「もうそういう時代じゃない」と思うようになったりもした次第。


ドラマ版「ウォッチメン」、最高でしたな…(しみじみ)。




つーか、本作は登場人物全員を「単純な悪」と描いていないのも良かったです(不良少年たちはネグレクト状態だし、クズ警官も家族には優しい)。だって現実もそうじゃないですか。例えば「クルド人暴行事件」とか、あの動画を見る限りでは警察の対応は酷いけど(僕も最初は「酷い」と思った)、クルド人が“思いっきり左側”である有田芳生議員のツイートのような行動を取っていたとするなら、もし僕があの現場の警官だったとしても間違いなく制圧するだろうし、とはいえ、そのことが明らかになる前から在日クルド人への差別的かつ陰謀論まみれのツイートがネットに垂れ流されていた状況を見れば、逆に「日常的に差別されてるんだな…」ということがビンビン伝わってくるから、そりゃあ在日クルド人たちはあの動画を見たら抗議デモするよなぁ…ってな調子で、単純に白と黒に分けられないじゃないですか。「Antifaが仕組んだ!」なんて、自宅にいながら簡単に見つかる「悪の組織」のせいにできれば、世の中はどれほどラクなのか…って、すみません、身の丈に合わない難しい話を書きすぎて、なんだか知恵熱が出てきましたーー ('A`) アタマイタイ






閑話休DiE!m9`Д´) ビシッ まぁ、ワケの分からぬことをダラダラと書き殴っちゃいましたが(苦笑)、ヘビーな問題提起をしてきていろいろと考えさせられるだけでなく「荒れた地域の警察モノ」としても普通に面白いという、非常に僕好みの映画でしたヨ (・∀・) ヨカッタ! 勧めてくれた「ヘソが無くて何が悪い」さんには感謝ですな…。何はともあれ、ラジ・リ監督はこれが長編デビュー作のようですが、これからも期待したいところでございます。おしまい。




パンフなどで引き合いに出されてたマチュー・カソヴィッツ監督作。観ておくと良いけど高値…。


非常に連想したアントワーン・フークア監督作。大好きです (°∀°)b オススメ!


映画の雰囲気的に連想したデビッド・エアー監督作。僕の感想はこんな感じ。


一応、映画版を貼っておきますよ。僕の感想はこんな感じ。







2020/06/06 22:00 | 映画(2020)TRACKBACK(0)  TOP

37セカンズ 37seconds(ネタバレ)

37セカンズ 37seconds


37セカンズ

2019/日本、アメリカ 上映時間115分
監督・脚本・企画・プロデューサー:HIKARI
企画・プロデューサー:山口晋
エグゼクティブプロデューサー:住友大祐、山形龍司、中瀬古優一
シニアプロデューサー:土屋勝裕
共同プロデューサー:松平保久 淺見朋子
協力プロデューサー:柳本千晶、岩堀恭⼀、岩堀昭
ラインプロデューサー:小泉朋
撮影:江崎朋生、スティーブン・ブラハット
照明:三善章誉
録音:石貝洋
美術:宇山隆之
ヘアメイク:百瀬広美
スタイリスト:望月恵
編集:トーマス・A・クルーガー
音楽:アスカ・マツミヤ
挿入歌:CHAI
助監督:二宮孝平
VFXスパーバイザー:小坂一順
キャスティング:おおずさわこ
スクリプター:樽角みほり
制作担当:岡本健志
出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、芋生悠、渋川清彦、宇野祥平、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏
パンフレット:★★★★(820円/関係者インタビューが充実。コラム2本も良かったです)
(あらすじ)
脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




95点


※本作については、すでに宇多丸師匠による的確かつ見事な時評がアップされているので、そっちを読んで!

「2020年2月公開で観たい映画の覚え書き」の「2/7〜8」のところに「10ミニッツ」はあるものの、本作を載せていないことからもお分かりのように、1ミリも興味がなかったというか。大体、何が37秒なのか知らないけどさ(苦笑)、障害者を描く映画なんて面倒くさそうだし、そんなの観る暇があるなら「どんな車でも60秒で盗み出す映画」とか「クズどもを19秒でブチ殺す映画」とか「スゴ腕スナイパー“2秒”に苦しめられる映画」でも観るし、超斬新なバンドデシネ「3秒」を読みますよって話。とはいえ、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題作品になったということで、2月20日(木)、「付き合いだしな (゚⊿゚) シカタネーナ」と新宿ピカデリーで鑑賞してきました。「なんという人材… (°д°;)」と思ったり。


自販機でドデカミンストロングを購入。
ドデカミン

9番スクリーン、観客は50人ぐらい。もち吉いなりあげもちのCMが超旨そうでした。
9番スクリーン

鑑賞後の僕の気持ちを代弁する寂海王を貼っておきますね(「刃牙道」より)。
なんという人材…


「えっ、そんな映画だったっけ!? Σ(゚д゚;)」と二度見されそうなレベルで雑なあらすじを書いておくと、主人公は脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ/佳山明)。過保護な母親・恭子(神野三鈴)と暮らしながら、高校からの親友で漫画家のサヤカ(萩原みのり)のゴーストライターとして活動するも、なんとなく鬱屈するエブリデイ (´・ω・`し ウーン そこで、母&サヤカから自立すべくアダルト漫画を描いてみたら、敏腕ムードの編集者・藤本(板谷由夏)に「リアルな性体験がないとダメ絶対!m9`Д´し ビシッ」と指摘されてしまったので、いざ夜の歌舞伎町へ!川*゚∀゚)=3 ヤッチャオーゼ! 出張ホスト・ヒデ(奥野瑛太)との初セックスには失敗するも、障害者専門デリヘル嬢・舞(渡辺真起子)や介護福祉士・俊哉(大東駿介)と知り合って、毎日が充実し始めるんですが、しかし。

恭子にバレてしまって、あーだこーだと揉めると、ユマは逃走!川`Д´)ノ アバヨ! 俊哉の助けを借りて、幼い頃に別れた父親を探してみたり(すでに死亡)、タイで教師として働く双子の姉・由香(芋生悠)に会いに行ったりしましてね。「生まれる時に呼吸が37秒間止まっていたせいで脳性麻痺になったけれども、それが自分で良かったというか、自分が自分であることを誇る!Σ(°д° し クワッ!ってな調子で開眼したユマは、帰国すると母親とスムースに和解。そんな彼女があらためて描いた漫画は1ページ1ページがとてもふっくらツヤツヤしていたので、それを読んだ編集者・藤本ったら「面白い漫画を描く子がいるのよ (・∀・し イルノヨ」と知り合いの編集者に電話→なんとなく未来が明るいムードで終わってたような気がするね(突然、馴れ馴れしい文章)。


ということで聴いてください、K DUB SHINEさんで「ラストエンペラー」(ラジオパーソナリティ風の口調にドヤ顔を添えてーー)。




ハッキリ言って、素晴らしい作品でした。超良く出来ている上に面白くて、メッセージ性もしっかりしていて、「障害者の映画なんて面倒くさそう ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」なんて心が狭いことを書いていた自分を恥じて、即座に舌を噛み切って死のうかと思いつつも遺される妻子の行方を案じて断念したほどでしたよ(面倒くさい文章)。まず、映画的なルックが良かった。母親が服を脱がしてお風呂に入るオープニングから「体が不自由な障害者のままならなさ」をサラリと描いていて、息を飲まざるを得ないというか。佳山明さんと神野三鈴さんが「お風呂に入るのだから脱いでますよ」と自然に裸を見せているのがまた偉いし(でも決してこれ見よがしではない)、この時点で「世界に通じる映画!Σ(゚д゚;)」って感心するほどでしたよ、マジで。


なんとなくHIKARI監督が撮ったCMを貼っておきますね↓




で、主人公が母親&サヤカによる日常の抑圧から解放される手段としての想像の世界をアニメーションで表現したり、その想像力の豊かさをビルの窓の明かりなどで見せたりとか、そういうのも本当に上手い。つーか、どうやらお父さんからもらったハガキ、お父さんへの想いとこの創作意欲っていうのが繋がっているんだ、というくだりをサラッと示す、本当に語り口のポップさ、そしてスマートさがね…という宇多丸師匠のPA-KU-RI!m9・∀・) ビシッ 今回が初めてという主演の佳山明さんの演技が100点というだけでなく、他の役者さんたちも素晴らしいし、非の打ちどころがゼロ状態。これが劇場長編作品デビュー作というHIKARI監督が逸材なだけでなく、僕的にはシンガポールと日本とフランスの合作映画「家族のレシピ」をプロデュースした山口晋さんが絡んでいるのも大きいんじゃないかと思ったり、思わなかったり (・ε・) ドッチダヨ


劇中で流れるアニメシーンを使ったMV。CHAIの曲も良いですな (´∀`) スキヨ




その他、思ったことを書いておくと、「佳山明さん、可愛いな… (´Д`;) ハァハァ」とか「ふとした会話や行動で母親の独善的な過保護振りを表していて上手い!」とか「サヤカがユマへのギャラをサッと減らすシーンがリアル」とか「サヤカ、討つべし!」とか「週刊のエロ漫画雑誌はないだろ」とか「サヤカが勝手に部屋に入ってくるシーンが苦手というか、体がままならないとプライバシーもないのね…」とか「サヤカの母親に引け目を感じている恭子の苦悩演技がイイ!」とか「ラーメンに、レモンを!? Σ(゚д゚;)」とか「大東俊介さん演じる俊哉が都合良い感じがしなくもないけど、逆にそういう優しい世界観という感じがしたので、まぁ、許す ( ´_ゝ`) エラソウ」とかとかとか。


ユマ役の佳山明さん、これからも頑張ってほしいですな。
佳山明


って、ベタ褒めですけれども、実は大きな不満があって。「サヤカが無惨な死を遂げなかった」というのは仕方ないとして(不要な文章)。まず、「ムービーウォッチメン」でリスナーの「たくや・かんだ」さんが指摘されていたように、僕も「性経験がないといい漫画が描けない」というのはどうかと思いました。確かに今から30年前のエロ漫画は女性器の位置が不自然な場所に描かれていたりすることがあって、「この作者は僕と同じく女性器を見た経験がないのだな… (ノω・、) グスン」と、そっと涙を流したりもしましたが、今どき映像やら情報やら作品やらが溢れているのだからノー問題じゃないですか。主人公を冒険に導くための「背中を押すひと言」だから仕方ないにせよ、今どきちょっと乱暴に感じました。

ただ、それ以上に納得がいかなかったのが、出張ホスト描写ですよ。ごめんなさい、僕はこういうのって全然知識がないんですけど(苦笑)、まず、この手の風俗は「プレイ前に客が料金を払う」のが大前提というか、B.B.クイーンズが「エジソンは偉い人」と歌うレベルに常識な話。そして「プレイ前に両者ともシャワーを浴びる&うがいをする」のが当たり前だし、大体「今どき客にキスをしない出張ホストなんているの?」って思うし…。シチュエーション自体は面白いし、奥野瑛太さんの演技も素晴らしかっただけに、ディテールにリアリティを感じなくてガッカリした…って、僕はこういうのって全然知識がないんですけどね (ノ∀`) テヘ


これらのことは北辰館の堤城平さんが指摘されてました…という雑なウソ(「餓狼伝」より)。
リアルじゃない


って、アホな文章を書いちゃいましたが(汗)、主人公は障害者ながらも誰にも当てはまる普遍的な自己肯定の映画であり、とはいえ、非常に面白くて感動する障害者映画でしたよ。今年は「だれもが愛しいチャンピオン」とか「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」とか障害者を扱った良作が多いですな。何はともあれ、これが長編デビュー作というHIKARI監督には「なんという人材… (°д°;)」と心底驚かされたというか、これからの活躍に期待しております。現在、Netflixで配信中なのでね、気になる人はぜひ観てみてくださいな。おしまい。




山口晋さんがプロデュースしたエリック・クー監督×斉藤工さん主演作。僕の感想はこんな感じ。


リリー・フランキーさん主演作。本作で「デリヘルの客」を演じた熊篠慶彦さんを描いた映画だとか。



なんとなく思いだした、とにかく評判の良い障害者映画。観なくては…。


障害者プロレスを扱ったドキュメンタリー。僕の感想はこんな感じ。


なんとなく貼ってみたニコラス・ケイジ主演作。パロディポルノの邦題は「69コカンズ」だったり (゚⊿゚) ナンダソリャ








2020/05/31 17:00 | 映画(2020)TRACKBACK(0)  TOP

前田建設ファンタジー営業部(ネタバレ)

※今回の記事は、本作や前田建設工業株式会社が好きな方は高確率で不快になると思うので、読まない方が良いです。








前田建設ファンタジー営業部

前田建設ファンタジー営業部

2020/日本 上映時間115分
監督:英勉
原作:前田建設工業株式会社、永井豪
脚本:上田誠
製作:川城和実、岐部一誠、有馬一昭、門田庄司、篠田学
エグゼクティブプロデューサー:濱田健二
企画・プロデュース:佐治幸宏
プロデューサー:森重宏美、西川朝子、坂口慎一郎
撮影:小松高志
Bカメラ:大嶋良教
照明:蒔苗友一郎
録音:加来昭彦
美術:金勝浩一
装飾:中澤正英
衣装:宮本茉莉
ヘアメイク:石邑麻由
編集:相良直一郎
音楽:坂本英城
音楽プロデューサー:佐藤純之介
音響効果:柴崎憲治
主題歌:氣志團
VFXスーパーバイザー:大萩真司
記録:松元景
助監督:富永拓輝
キャスティング:南谷夢
ラインプロデューサー:塚村悦郎
プロデューサー補:古市秀人
制作主任:浦野博士
出演:高杉真宙、上地雄輔、岸井ゆきの、本多力、町田啓太、山田純大、鈴木拓、水上剣星、高橋努、濱田マリ、鶴見辰吾、六角精児、小木博明、永井豪
パンフレット:★★★★(820円/「検討図」のデザインが素敵! キャラクター相関図とか土木解説用語とかのページもいいですな)
(あらすじ)
2003年、バブル崩壊後の建設業界。前田建設の広報グループ長は、「アニメ『マジンガーZ』の出撃シーンに登場する地下格納庫を現状の技術と材料で建設したらどうなるのか?」を検証するWEB連載を提案する。広報グループの若手社員・土井は嫌々ながらもプロジェクトに携わるうち、架空のものに対してどこまでも真剣に向き合う社内外の技術者たちの姿を目の当たりにし、意味のないことだと思っていた業務に本気で取り組むようになっていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓





50点


昨日は「AI崩壊」の記事をアップしたんですが、本日は同じ日に観た本作の感想を更新しておきますよ。本物の「前田建設ファンタジー事業部」自体は読んだこともあって好きだったけど、ごめんなさい、「これを映画化して面白くなるの? (・ε・) ドウナノ?」と思ったし、「映画に出てくるオタク」の描き方にイラッとすることが多いので、スルー予定だったんですけれども。愛聴しているラジオ番組「ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ」出演した時の高杉真宙さんがとても素敵でね…(しみじみ)。高杉真宙さんとは「仮面ライダー鎧武/ガイム」からの付き合いだし(※注 番組を観てただけです)、せっかく映画の宣伝のために出演したのだから観てあげようかなと思い立ち、仕事で徹夜明けの2月21日(金)、ユナイテッド・シネマ豊洲にて、会員サービスデーを利用して鑑賞いたしました(その後、「犬鳴村」「AI崩壊」をハシゴ)。「ワルい予感が当たった… (`Δ´;)」と思ったり。


サービスデーのおかげで映画代は3,300円で済んだというね。
サービスデーなので3300円!

4番スクリーン、
4番スクリーン

鑑賞中の僕の気持ちを代弁する範馬刃牙を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。
わるい予感が当たった


今から書く文章は、なかなか心が狭いというか、僕の小雨の日の水溜まりレベル並みに浅い政治的&社会的な思想なども垂れ流し状態になるので、そういうのが苦手な方は読まない方が良い…ということは伝えておきましょう(偉そうに)。まぁ、本作は“仕事モノ”でよくある「新人が最初はやる気がなかった or 舐めてたけど、少しずつ感化されて情熱的になって…」的なお話でしてね。こういうのって普通は主人公だけだったりするイメージですけど(「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」とか)、本作はチームのメンバーが1人ずつ変わっていく分、“ダメチーム”モノ的な魅力もあった印象。一応、オチを書いておくと、いろいろな人の協力によって「マジンガーZ」の格納庫の見積は見事完成して、ネットにアップしたら大評判となり、最後はデスラー総統から仕事を依頼されて終わってたんじゃないかしらん。


エンドクレジットでは氣志團による主題歌が流れてましたよ↓




率直な感想を書くと、僕的には映画全体のノリが合わなかったというか。この冒頭映像をユニークだと思って楽しめる人なら良いんでしょうけど、僕的にはこの時点でキツかった。いや、すべて「わざと」なのは分かっているんです。「『架空の基地の見積を出す』というバカバカしいと笑われそうなことを情熱的に取り組む」というコメディなのだから、演出が過剰になったり、逆境に見舞われたりするのは仕方ないのかもしれませんが、でも、そのせいで元となった「前田建設ファンタジー事業部」の「スマートな面白さ」が消えちゃった印象。あえてこう書きますけど「たかが『架空の基地の見積を出す』程度のこと」じゃないですか。そこに主人公たちが情熱を燃やすのは良いとしても、他の部署の先輩が最初は非協力的だったりとか、プレッシャーを掛けてきたりとか、悪い意味でバカバカしかった…ってのは意地悪な文章ですかね。脚本を書いた上田誠さんのパンフ掲載のインタビューによると、元になった舞台はもっとのどかな雰囲気だったみたいで、僕はたぶんそっちの方が好みだった気がします。

というか、僕的に本作の前田建設はクソみたいな職場に見えましたよ。まず「会社の命令でボランティア」というのが最悪で、もしあの連載が本当に「上司の命令による無償行為」だったとするなら、スゲー嫌な職場だなと。しかも、劇中ではそれを命じる小木博明さんが「強引で暑苦しいけど実は良い上司」みたいな扱いをされているから「マジかよ (°д°;)」と。僕的には“昔ながらのパワハラ親父”に見えてとにかく不快であり、「実は陰で調整してた」みたいなシーンを美談っぽく描かれても、「そりゃあ、お前がタダ働きさせてんだからそのぐらいはやっとけよ ( ゚д゚)、ペッ」程度にしか思えなかった。他の部署が露骨にイヤミを言ってきたり(後で「良い人」になるにせよ、パワハラチックな職場環境なんだなと)、答えを出し渋るオヤジが出てきたりするのも不快というか、根回しもしねーのかよと。

これが若手社員の方から「やりましょうよ!」「勝手にやりますから!」とか言い出したなら話はべつ!というか、全然飲み込めたと思うんですけど(「周囲の抵抗」があるのもまだ分かる)、そうなると「やる気のない若手が仕事の面白さに気付いて〜」みたいな展開ができないから仕方ないんでしょうか。あと、他の男性社員たちは「仕事の魅力」だけで情熱的になっていくのに、 岸井ゆきのさん演じる女性社員だけ恋愛要素を絡めてくるのって、別に「ナシ」ではないものの、かなりモヤッとした…って、伝わりますかね。さらに驚いたのが女性社員への「頭ポンポン」で、これも信頼関係がある間柄なら別に「ナシ」ではないのかもしれませんが、ううむ、僕的にはいくら2003年が舞台でも「2020年公開の映画」として気持ち悪かったし(否定的に描くならともかくさぁ…)、前田建設のような大企業でも女性社員への対応は旧態依然なのかとガッカリしたし(試写で観た時に注意しなかったの?)、英勉監督の無神経さについては「そう言えば僕が大嫌いな『ハンサム★スーツ』を撮った人なんだよな」なんて思ったり。


「頭ポンポン」を観た時の僕の気持ちを代弁する範馬刃牙を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。
マジかよ…


ただ、好きなところもあるんですよ。各メンバーの担当ごとに観客に前田建設の業務が紹介されていく構成は非常にわかりやすかったし、オタク的な人の描き方も町田啓太さん演じるヤマダはスゲー良かった(逆に本多力さんが演じたチカダはステレオタイプすぎてイラッとした)。それと「マジンガーZ」絡みのシーンは全部良かった。世代的には少し前になるし、どちらかというと僕は「ジム・マジンガ」派なんですが、とはいえ、「マジンガーZ」が出てくると、それだけで「おおっ!(*゚∀゚)=3」とテンションが上がっちゃったのだから、さすがは永井豪先生、ですな(知った風な口で)。それと上に貼りましたが、エンドクレジットは非常に良い出来だと思いましたね〜。


ううむ、「マジンガーZ」はやっぱりカッコイイのです… (`Δ´;) オノレ...




そんなワケで、全体的には「ワルい予感」が的中してイラッとしたものの、サイトを立ち上げる時は実際に苦労したみたいだし、ゴールデンウィーク中に無料配信した姿勢には感心したし、「ダムを作る会社の映画」を観た後に「ダムに沈められた村の映画」を観たという流れも勝手に面白かったので、トータルすると50点という着地。つーか、ドリルジャンボとか長島ダムが出てくるシーンも最高だったので、僕的には“ちゃんとダムを作る「プロジェクトX」みたいな作品”が観られたら一番グッときたような気がするんですが、そうなったら間違いなく映画化されなかったでしょうな… (´・ω・`) ムズカシイ 何はともあれ、僕の心が狭いだけなのでね(苦笑)、気になる人は観れば良いし、前田建設も現実の世界で仕事を受注するために天下りの人を入れたり自民党への献金などを頑張ってくれれば良いと思います。おしまい。




ソフトは9月9日発売予定だそうです。


サントラを貼っておきますね。



ノベライズじゃないので注意。下請けをタダ働きさせてセクハラしたことが報道された社員がいる出版社が出しております。


英勉監督作は3本しか観てなかったんですが、一番嫌いじゃないのはこれかなー。









2020/05/30 15:00 | 映画(2020)TRACKBACK(0)  TOP

AI崩壊(ネタバレ)

AI崩壊

AI崩壊ポスター

2020/日本 上映時間131分
監督・脚本:入江悠
企画・プロデューサー:北島直明
製作:沢桂一、池田宏之、菊川雄士、石垣裕之、森田圭、武田京市、弓矢政法、平野ヨーイチ、田中祐介、角田真敏、小泉貴裕
エグゼクティブプロデューサー:伊藤響、松橋真三
ラインプロデューサー:佐藤圭一朗
撮影:阿藤正一
照明:市川徳充
録音:古谷正志
美術:小島伸介
装飾:酒井拓磨
スタイリスト:荒木里江
ヘアメイク:本田真理子
編集:今井剛 
音楽:横山克
主題歌:AI 
スーパーバイジングサウンドエディター:勝俣まさとし
VFXメーパーバイザー:赤羽智史
監督補:岸塚祐季 
助監督:山岸一行 
制作担当:吉田信一郎
AI監修:松尾豊、松原仁、大澤博隆 
犯第心理学監修:越智啓太
警察監修:古谷謙一 
出演:大沢たかお、賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典、高嶋政宏、芦名星、玉城ティナ、余貴美子、松嶋菜々子、三浦友和、田牧そら、野間口徹、マギー、黒田大輔、酒向芳、毎熊克哉、MEGUMI、坂田聡、芦那すみれ、螢雪次朗、荻野友里、川瀬陽太
パンフレット:★★★★(820円/ネタバレ前提の作りは大好き。関係者インタビュー多めなのも良し)
(あらすじ)
2030年、天才科学者の桐生浩介が亡き妻のために開発した医療AI「のぞみ」は、年齢、年収、家族構成、病歴、犯罪歴といった全国民の個人情報と健康を管理していた。いまや社会インフラとして欠かせない存在となった「のぞみ」だったが、ある時突然、暴走を開始。AIが生きる価値のない人間を選別して殺戮するという、恐るべき事態が巻き起こる。警察庁の天才捜査官・桜庭は、AIを暴走させたのは開発者である桐生と断定。身に覚えのない桐生は逃亡を開始する。桐生は「のぞみ」を管理するHOPE社の代表で、義弟でもある西村悟とひそかに連絡を取りながら、なんとか事態の収拾を目指すが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の“今週の課題映画”になったということで、本日は本作の感想をアップしておきますよ。昔々「SR サイタマノラッパー」に感動して以来、一応、入江悠監督作は劇場で観てきたから、「2020年2月公開で観たい映画の覚え書き」でも「絶対観る!」にチョイスしていたワケですけれども。そのタイトル&ビジュアルを観たら、勝手な「プラチナデータ」っぽさを感じたというか(この時はまだ観てませんでしたがー)、率直に書くと「つまらなさそう… (´・ω・`)」と思っちゃって、あまり食指が動かなかったのです。


映画自体はそれほど面白くなかったけど、このシーンはすごく好き(「プラチナデータ」より)。
プラチナデータ


とはいえ、入江悠監督のメルマガ「僕らのモテるための映画聖典」を読んでいたらその情熱にほだされてしまったので、観ることに決定。仕事で徹夜明けの2月21日(金)、ユナイテッド・シネマ豊洲にて、会員サービスデーを利用しながら「前田建設ファンタジー営業部」「犬鳴村」と3本連続で鑑賞してきました。「ちょうどいい (´∀`) スキヨ」と思ったり。


UCシネマ系列の会員サービスデーは1100円で観られるので、一気に3本鑑賞したのです。
サービスデーなので3300円!

5番スクリーン、30人ぐらいはいましたよ、きっと。
5番スクリーン


鑑賞後の僕の気持ちを代弁するRHYMESTERの名曲を貼っておきますね↓




最初に身もフタもなく雑にストーリーを書いておくと、時は2030年、天才科学者の桐生浩介が亡き妻のために開発した医療AI「のぞみ」が暴走して、次々と「生きる価値がないと判断した人間」を殺し始めちゃうから、さぁ大変!(°д°;) タイヘーン! 警察に犯人と認定された浩介は逃亡するも、娘が「のぞみ」と一緒に閉じ込められて早く何とかしないと凍死してしまったりもするので、「のぞみ」を管理するHOPE社の代表兼義弟の西村悟と連絡を取りながら、事態の収拾を図るのです。で、あーだこーだあって西村悟は特殊部隊に射殺されたりしたけれど、結局は警察庁の天才捜査官・桜庭が自分の仕業だとベラベラ話してくれたり、家族の写真を「のぞみ」に見せたらほだされて正気に戻ってくれたりして、めでたしめでたし…ってな調子でございます、たぶん。


エンディングで流れるAIさんによる主題歌「僕らを待つ場所」を貼っておきますね↓




本作はいわゆる「逃亡者モノ」で、SF風味が合わさった作品では、洋画だと「マイノリティー・リポート」とか、邦画だと「プラチナデータ」とかを連想しちゃいますわな。そりゃあ、ハリウッド作品と比べちゃうと小規模感は否めませんが(汗)、なんて言うんですかね、美術やら何やらにチープさを感じなかったというか、それなりにリアリティのある未来世界を作り出していた印象。主人公の逃亡シーンも結構頑張っていて、入江悠監督が撮るアクションシーンは良いな…とあらためて思ったり思わなかったり (・ε・) ドッチダヨ 役者さんたちの芝居も良くて、大沢たかおさんのいろいろな表情が楽しめるのが愉快だっただけでなく、いけ好かない天才エリートキャラを演じた岩田剛典さんが素晴らしくてね…(しみじみ)。僕的には常にコブラを演じてほしい気持ちですが、とはいえ、良い役者さんだなぁと感心いたしました。あと、毎熊克哉さんが結構重要なキャラ(記者)を演じてたのも着実にキャリアを積んでいる感じがしてうれしかったですね〜。

まぁ、唯一感じた大きな不満を書くと、「AIがほだされるオチ」に関しては、僕的には大沢たかおさんと松嶋菜々子さん、そして田牧そらさんによる桐生ファミリーにすっかり感情移入していたのでノー問題なんですけれども(最後は泣きながら観てた)。ハッキリ言って、「ベラベラと本心を話してみたら中継されてたー!(°д°;) ゲェーッ!」ってオチには結構ガッカリいたしました。いや、まぁ、この手の「録音されてた or ネット等に中継されてた」的なオチって、あまり観たことがない人ならスムースに驚けると思うんですが、最近はこの手のオチを見飽きた感があるし(さすがにネタバレすぎるので作品名は挙げませんがー)、何よりも岩田剛典さん演じる天才キャラ・桜庭が桐生に自分の胸の内を話すシチュエーションが「それ、中継されてなくても、あの場にいる人間たちに聞かれるだけで十分アウトじゃね?」って思ったし、そもそもみんなが棒立ち状態でベラベラ話し出すのもウザかったし、全然乗れなかった…って、伝わりますかね。


終盤、桜庭がベラベラ語り出した時の僕の気持ちを代弁する宮本武蔵を貼っておきますね(「刃牙道」より)。
長いな話が


ただ、警察描写は意外とリアルだったし、三浦友和さんと広瀬アリスさん(水野美紀さんっぽくて素敵!)のバディ感が好きだったし、主題歌にAIさんを起用したのも好感が持てたし、何よりも昨今の「原作ありき」の企画しか通らなさそうな状況下でオリジナル脚本で勝負した入江悠監督の姿勢が好きだし、全体的には「ちょうどいい (´∀`) スキヨ」って感じだったというか、映画代分は満足できましたよ。僕的にはこのぐらいの和製アクションエンタメが適当に作られていったらいいなぁと。何はともあれ、過剰に期待しなければ普通に楽しめる作品だと思うのでね、気になる方はぜひ観てみてくださいな。




すでに配信がスタート&ソフトも販売中なのです。



本作のノベライズでございます。


サントラを貼っておきますね。
 


入江悠監督の前作。僕の感想はこんな感じ。
    


本作を観る前に観た大友啓史監督作。僕の感想はここの5本目。
 

2020/05/29 18:35 | 映画(2020)TRACKBACK(0)  TOP

スキャンダル(ネタバレ)

スキャンダル

スキャンダルチラシ

原題:Bombshell
2018/スペイン 上映時間118分
監督・制作:ジェイ・ローチ
制作:アーロン・L・ギルバート、ジェイ・ローチ、ロバート・グラフ、ミシェル・グラハム、チャールズ・ランドルフ、マーガレット・ライリー、シャーリーズ・セロン、ベス・コノ、A・J・ディックス
製作総指揮:ミーガン・エリソン、ジェイソン・クロス、リチャード・マコーネル
脚本:チャールズ・ランドルフ
撮影:バリー・アクロイド
美術:マーク・リッカー
衣装:コリーン・アトウッド
編集:ジョン・ポール
音楽:セオドア・シャピロ
音楽監修:エブイェン・クリーン
特殊メイク(シャーリーズ・セロン):カズ・ヒロ 
出演:シャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー、ケイト・マッキノン、コニー・ブリットン、マルコム・マクダウェル、アリソン・ジャネイ、リブ・ヒューソン、ブリジット・ランディ=ペイン、ロブ・ディレイニー、マーク・デュプラス、スティーブン・ルート、ロビン・ワイガート、エイミー・ランデッカー、マーク・モーゼス、ナザニン・ボニアディ、ベン・ローソン、ジョシュ・ローソン、ブルック・スミス、ジェニファー・モリソン、アシュリー・グリーン、アリス・イブ、P・J・バーン
パンフレット:★★★★(820円/コラム3本をすべて女性が違う視点で書いているのが良かったし、特に小川たまかさんのコラムが怒りに満ちていてグッときた)
(あらすじ)
アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースの元・人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズを提訴した。人気キャスターによるテレビ界の帝王へのスキャンダラスなニュースに、全世界のメディア界に激震が走った。FOXニュースの看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリーは、自身がその地位に上り詰めるまでの過去を思い返し、平静ではいられなくなっていた。そんな中、メインキャスターの座のチャンスを虎視眈々と狙う若手のケイラに、ロジャーと直接対面するチャンスがめぐってくるが……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


※本作については、町山智浩さんの「たまむすび」での紹介とかさえぼー先生のレビューがとてもタメになるので、そっちを読めば良いザンス。
※今回の記事は、「デス・プルーフ」のネタバレに触れているんですが、スゲー面白い映画なので、未見の方は観てから読んで!
※今回の記事は、「ハウルの動く城」のネタバレに触れているので、気をつけて!

現在、更新していない映画の感想が97本も溜まっているんですけど(汗)、アメブロのアフリエイトの仕様変更によって、ずーっと古いエディタを使っていた僕的には過去記事が非常に書きにくい状況になってしまいましてね… (´・ω・`) メンドクサイ とりあえずこれまでに観た映画の記事に関しては、当分こちらにアップしておきますよ。

2020年は“女性が戦う映画”がたくさん公開される印象があって、なんとなく押さえておきたかったし、シャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビーの3人の共演に興味が湧いたし、何よりもセクハラ野郎をぶっ潰す内容なら、さぞ留飲が下がって日々のストレスが癒されるだろうよ ( ´_ゝ`) フフフ」と思って観ることに決定。3月16日(月)、TOHOシネマズシャンテ「ハスラーズ」を観てから、すぐ側のTOHOシネマズ日比谷で鑑賞いたしました(その後、またシャンテに移動して「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」をハシゴ)。「こんなもんかよ… (`Δ´;) ヌゥ」と思ったり。


7番スクリーン、1/3ぐらいの入りでしたよ。
7番スクリーン、15時35分の回

夕飯としてタンドリーチキンとキャベツのトルティーヤサンドを摂取しながら鑑賞しました。
タンドリーチキンとキャベツのトルティーヤサンドとコカコーラ・ゼロ

鑑賞後の僕の気持ちを代弁する柴千春を貼っておきますね(「グラップラー刃牙」より)。
こんなもんかよ


最初に「えっ、そんな内容だっけ!? Σ(゚д゚;)」と驚かれそうなほど雑にお話を書いておきますと。舞台は2016年、アメリカのケーブルテレビ局FOXニュースで、主人公は“すでに花形キャスターである女”メーガン・ケリーシャーリーズ・セロン)と“花形キャスターだった女”グレッチェン・カールソンニコール・キッドマン)、“花形キャスターになろうとする女”ケイラ・ポスピシルマーゴット・ロビー)の3人でしてね(ケイラだけいろいろな人の証言を元に作られた架空キャラ)。映画が始まると、メーガンは女性蔑視発言を非難したトランプ大統領候補から罵詈雑言のツイートを飛ばされる→支持者から攻撃されるようになって、グレッチェンはCEOのロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)に性的関係を強要されて断ったせいで冷遇される日々を送ってまして。そんな時、出世したいケイラはロジャーに直談判するチャンスを得るも、「忠誠心を見せてみろ」下着が見えるまでスカートの裾を上げさせられるからゲッソリですよ ('A`し ゲッソリ


すみません、主人公が3人だと、つい「仮面ライダーアギト」っぽい紹介にしたくなるのです…。




いろいろあって、トランプが「正直、スマン (°∀°)b」とメーガンに軽く謝って騒動が沈静化する中、ロジャーの意に沿わない放送をしたせいでグレッチェンがクビにされると、実はずーっと弁護士と準備していた彼女はロジャーをセクハラで提訴!川 ゚д゚) ブッツブス! 「ロジャーを守れ!」的なムードが漂う社内で、ロジャーに恩を感じてきたメーガンは迷いながらも密かに取材を始めると、「他の人にセクハラされてました… (ノω・、し」と、FOXニュース自体がセクハラ上等な職場だったことが判明して、ケイラもロジャーと性的関係を持ったことを告白しましてね。


ロジャー・エイルズは特殊メイクをしたジョン・リスゴーが演じているんですが…。
ロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)

ちょっと「荒れ地の魔女」を思い出した…という、どうでも良い文章(「ハウルの動く城」より)。
荒れ地の魔女


最終的にはメーガンも「ダメなものはダメでした (・∀・し」と気付きまして。放送でセクハラを告発したため、ロジャーは激怒するもアッサリ解任ですよ(微笑)。これでやっとFOXニュースの職場環境も良くなる…と期待してみたものの、ルパート・マードック(マルコム・マクダウェル)の演説を聞いていると、結局は何も変わらなさそうなので、ケイラはスムースに退職。グレッチェンらセクハラ被害者は多額の賠償金(5000万ドル)を見事ゲットするも、ロジャー&セクハラ幹部も多額の退職金(6500万ドル)を無事受け取ったことがテロップで流れて映画は終わってました、たぶん。


俳優たちを実際の人物にかなり似せているということで、メイク映像を貼っておきますね↓




基本的には非常に面白かったです。本作の脚本は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」チャールズ・ランドルフだそうですけど、スゲー納得したというか。複数の主人公が登場して“第四の壁”を越えて話しかけてくるだけでなく、そこはかとない“オチの苦さ”も似てる印象。そりゃあジェイ・ローチ監督は「オースティン・パワーズ」シリーズや「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズといったコメディを手掛けてきただけあって、FOXニュースの社内に“日常的にはびこっているセクハラ”をサラリとブラックに見せたりするのは良かったし、話もテンポもよく進むし、ケイラの同僚役で登場するケイト・マッキノンは清涼剤のような存在感があったし、一応は最後の最後にロジャーがワナワナ顔になるから、それなりに留飲は下がったんですけれども。

とはいえ、やっぱりセクハラシーンの数々は不快だったし(特にマーゴット・ロビーが超可哀相!)、何よりも「セクハラ野郎どもが多額の退職金を得たエンド」は、事実だからこそ胸糞が悪いなぁと (`Δ´;) ウーム 正直、この映画の前に観ていた「ハスラーズ」がスゲー良かったながらも切ない終わり方だった→本作にはもっと「セクハラ野郎をブッ殺してイェーイ!ヘ(゚∀゚*)ノ ヤッタァ!」的な爽快感を求めていただけに、そういう点では「こんなもんかよ」と失望しちゃったと言わざるを得ないのが現状…(宇多丸師匠っぽい言い回し)。できれば「デス・プルーフ」のラストのように、メインの女性3人でロジャーをなぶり殺しにして終わってほしかったです…って、製作者サイドから「テメェ、何言ってんだ ( ゚д゚) コロスゾ」って思われそうな願望ですがー。


ううむ、こんな風に終わってほしかったなぁ(「デス・プルーフ」より)。
「デス・プルーフ」のラスト


な〜んて、アホな文句を書いちゃいましたけど(苦笑)、なるべく多くの人が本作を観た方がいいと思ったりするのは、「セクハラ」をわかりやすく描いていたから。ロジャーのダイレクトな行為だけでなく、FOXニュースの野郎どもが職場の女性たちに投げかける酷い言葉やあからさまな視線、そして「そんな環境を黙認する同僚(男女とも)の姿勢」などなど、観客が「あ、これダメじゃん!Σ(゚д゚;)」と“セクハラ行為とその悪質さ”に気付けるように演出されているんですよね。で、僕的にグッときたのが、映画序盤で引き合いに出される「2006年のルディ・バクティアルのケース」。“立場が上の男”から昇進と引き換えに肉体関係を迫られたルディ(ナザニン・ボニアディ)が必死に解決策を探りながら言葉でかわそうとするんですけど、これが実に良く出来ているのです。

先日、「幻冬舎の編集者が下請けの女性ライターを2ヵ月間もタダ働きさせた挙げ句に性的関係を迫った件」が報道された時、被害者の「気を遣いまくった返信」を読んで、この場面を真っ先に思い出したんですが(その次に「クソLINE特集」を連想した)、要はセクハラ野郎の常套手段ってことなんでしょうな。つーか、またロジャーが「優秀で多くの人から慕われている」のがリアルというか(それゆえ被害者は「自分の方が間違ってるのかな?」とか思ったりする…)、箕輪厚介さん広河隆一さんもそんな感じなんだろうなぁ…なんてね。あと、本作で被害に遭うのが「ステレオタイプな同情しやすいキャラ」ではなく「野心がある女性」だったのも良くて。日本で例えると、「はあちゅうさんが電通時代に受けたセクハラ被害」を連想しましたよ。


昇進と引き換えに、FOXニュースの上司がこんなことを言い出しましてね。
ホテルの部屋に行きたい

レポーターのルディは内心で怒りながらも…。
ふざけんな!

セクハラ上司のいきり立った性欲を鎮めるため、なぜか謝るのでした (´・ω・`) ヒドイ
もし私が誤解させたなら謝ります


男同士でも、例えば「性的な宴会芸」をやらされて泣いていた先輩を見たことがあるし、松江哲明監督が加賀賢三さんに性行為を強要して問題になったりしてるし、こういったパワハラやらセクハラやらは世の中に溢れていて。いや、そもそも僕だって「27年の社会人活動」において、気づかずにパワハラめいたことをしていた可能性はゼロではないし、偉い立場になって増長したら下請けをいじめるかもしれないし(セクハラではないけど、僕が金持ちでイケメンだったら高野政所さんの「たぶんこいつらは悪人だという話。」に出てきた“悪人たち”みたいになるかもしれないし)決して他人事ではないんですよね… ('A`) だからこそ、いろいろな人がこの「テンポ良くセクハラを学べる映画」を観て我が身を振り返ってほしいし、もし間違ったことをしてしまった時は「トラップ」なんて姑息なツイートをせず、スムースに謝罪することが大事…なんて知った風な口を叩いてみたけど、君はどう思う?(突然、フランクな問い掛け) ううむ、ごめんなさい、自分でも何が書きたいのか良くわからなくなったので(汗)、この駄文を終えます。おしまい。




すでにYouTubeやらU-NEXTやらで配信が始まっているのです。


サントラを貼っておきますね。


実在の脚本家を描いたジェイ・ローチ監督の前作。かなり興味あります。


チャールズ・ランドルフが脚本を書いたアダム・マッケイ監督作。僕の感想はこんな感じ。





タグ : ジェイ・ローチシャーリーズ・セロン新作映画ニコール・キッドマンマーゴット・ロビーチャールズ・ランドルフ実話映画セクハラ

2020/05/24 03:00 | 映画(2020)TRACKBACK(0)  TOP

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