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ジル・リップス 殺戮者(ネタバレ)/ありがとうドルフ・ラングレン特集

ジル・リップス 殺戮者※この記事は、2010年11月4日にアップしたものです。

ジルリップス
ジル・リップス 殺戮者 [DVD]

原題:JILL RIPS
2000/アメリカ 上映時間94分
監督:アンソニー・ヒコックス
原作:フレデリック・リンゼイ
脚本:ケヴィン・バーンハート、ギャレス・ウォーデル
出演:ドルフ・ラングレン、ダニエル・ブレット、リチャード・フィッツパトリック、クリスティ・アンガス、チャールズ・セイシャス、サンディ・ロス、ゲイリー・ロビンス
(あらすじ)
元刑事(ドルフ・ラングレン)は、残虐極まりない猟奇殺人犯を追っていたが事件は泥沼化していく。そんな中衝撃の事実に突き当たる。(以上、amazonより)

予告編はこんな感じ↓




50点


※今回の記事はSMのプレイ中の画像などが貼られているので、そういうのが苦手な人は読まないほうが良いです。

「ありがとうドルフ・ラングレン特集」もやっと19本目ということで、今回はラングレン初の「戦慄のサイコ・サスペンス・アクション!!」(ビデオジャケットより)の「ジル・リップス 殺戮者」を観てみました。ラングレンのやる気は感じられましたよ!

主役がラングレンということで、「どうせ猟奇殺人犯を追う中でカーアクションとか景気の良い爆破シーンとかあって、最後はタイマンで倒して『イェーッ!』みたいな感じなんでしょ」なんて思って観ると、肩透かしを食らうことは間違いなくて。アクション要素は非常に少なくて、この映画はむしろラングレン初のハードボイルド作品といった感じなんですよね。ちなみにタイトルの「ジル・リップス」は劇中で新聞社が“女性版ジャック・ザ・リッパー”として勝手に犯人に名付けたあだ名だったりします。


新聞に「JILL RIPS」という報道が!
新聞報道


今回のラングレンは元警官のアル中という設定。1977年のボストンを舞台に「兄を殺した犯人を追ううちに倒錯したSMの世界に足を踏み入れてしまい--」というハードボイルド小説で10回は読んだような話ではあるんですが、「亀甲縛り状態で刺殺されまくった死体」「グロめの死体写真」「頭がグチャグチャになった亀甲縛り状態の死体」など、今までのラングレン映画にはなかったような過激な描写が次々と出てくる上に、ハードなセックスシーンまで出てくるので(女性の股間にボカシが入る!)、かなりビックリさせられました。


女王様と対峙するラングレンなんて超珍しい!
女王様登場

自ら体を切り刻まれる人や…。
切り刻まれる人

こういうよく分からないプレイをする人なども登場。
楽しそうなプレイ

ラップにくるまれてるこの人は何が楽しいんでしょうか。
ラップにくるまれてる人

特撮モノにこんな敵が出てきたような…。デアデビルっぽい。
全身レザー


まぁ、最初は「地質学者の兄は地下鉄工事に反対していたから、建設業者のジム・コンウェイ(チャールズ・セイシャス)に殺された!」「変質者に見せかけるため、その手下のSM専門のポン引きのジョー・クジャビア(Victor Pedtrchenko)に殺させたに違いない!」と思って捜査してたら、なんと兄がSMにハマッていたことが判明。「コンウェイはそのプレイを隠し撮りしたフィルムを持っていた→兄に工事に反対されたら脅すだけで良かった」ということで、容疑者はフランシス(クリスティ・アンガス)というブロンドの女王様に。彼女の犯行を暴くため、ラングレンは自らSMに挑戦することになるんですよ↓


亀甲縛り状態で吊るされてブーツを「舐めろ!」と命令されるラングレン(カメラは逆さになってる)。この後、スゲー嫌な顔で舐めてました。
お舐め!

ボールギャグまでかまされてピンチに陥ったところに救いが! ラングレンの体当たり演技ですな。
いきなり射殺!


で、危機一髪と思われた時、友人の刑事エディ(リチャード・フィッツパトリック)が乗り込んできてフランシスを射殺してくれるんですが、実はフランシスが手に持っていたのは羽がついた棒みたいなモノで、単にラングレンをくすぐろうとしていただけ→射殺は誤射だったことが判明。ただ、タンスの中にナイフが入ってたので、「やっぱりコイツが犯人だよ」ということで、一件落着ムードになるんですが…実は映画序盤から出ていた兄の妻であるアイリーン(ダニエル・ブレット)が真犯人でして(兄とは半年前に結婚していて、ラングレンの実家に居候中だった)。

このアイリーン、かなり境遇が酷いんですよ。まず、母親は売春婦だったんですが、ポン引きのクジャビアに撲殺されて、遺体はゴミ箱に放置(しかもクジャビアの情婦のメアリーがアリバイを偽証したため、クジャビアは無罪)。その後、姉妹のフランシスとともに養父母に引き取られるんですが、義父に犯されまくる日々がイヤになり、街に出て売春婦→いつしかSMの女王様に。月日が経って、ラングレンの兄と出会って結婚。普通の生活を送ろうとするものの、兄に素性がバレてしまって、兄の友達とも無理矢理セックスをさせられていたそうなんですね。で、いい加減、耐えられなくなって、兄やSMの客などを刺殺しちゃったワケです。クライマックス、彼女は母親を殺したクジャビアを地下鉄の坑内に呼び出して刺殺しようとするんですが、それを止めに来たラングレンにこんな台詞を言うんですよ↓


「ずっと耐えてきたわ」
「母親が殴り殺され、虫ケラみたいに捨てられても」
「義父の薄汚い欲望にも歯を食いしばって耐えたわ」
「あなたのお兄さんに言われるまま、彼の友人を体でもてなした」
「一体、いつまで私の地獄は続くの?



スゲー可哀相でした (ノД`) 地下鉄の坑内の雰囲気といい、ヒロインの告白振りといい、ちょっと最近観た「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」を思い出しちゃいましたね…。で、ラングレンが「自首しろ」と言うのも聞かず、アイリーンはクジャビアに襲い掛かるんですけど、アッサリ返り討ちにあって、逆に殺されそうになったのでラングレンがクジャビアを射殺。ラングレンは「もう大丈夫だ、俺がいる」なんて言っちゃうワケですが、クジャビアの死を偽装して実家に戻ると、そこにはもうアイリーンはいなくて…。ラングレンが椅子に座って、犬を撫でて、映画は終わってました。


クライマックスの地下坑道はこんな感じ。
クライマックスの地下坑道

哀愁が漂うラングレンの背中…。
哀愁漂うラングレン


どうです? 実にハードボイルドというか、フィルムノワール的な感じがしませんか? 若干の格闘アクションやカーアクションはあるものの、クライマックスではアクションシーンが全然ないし。しかも、この映画のラングレンに超人的な強さはなく、コンウェイの手下どもにリンチされてしまう程度の戦闘力しかないというのも実に珍しい。体当たりのSMプレイ、ハードなセックスシーン、最後の「法の正義よりも愛を優先してしまうというオチ」なども今までのラングレン映画にはなくて、僕的には「ラングレン自身が新境地を切り開こうとした作品だったのでは?」と思ったりしました。


ラングレンが雑魚にリンチされるのは結構珍しいシーン。
リンチされるラングレン!


ただ、非常に残念なことにあまり面白くはないんですよね…。ラングレンが演じる主人公が恐ろしくバカで行き当たりばったりの行動しかとらないんですが、それがたまたま上手くいくみたいな展開ばかりなので、観ていて基本的にイライラするんですよ。というか、そもそも脚本自体が恐ろしく適当で。舞台を1977年のボストンにした意味があまり分からないし、アル中設定も中途半端な扱いだし、「ある雨の晩、売春婦を集め讃美歌を歌わせて、その晩、町を出た」という警察を辞めた理由も陳腐だし、ダニエルズ(ゲイリー・ロビンス)という巨漢の用心棒が実は「67年のクルーザー級チャンピオンで知り合いだった」というくだりも意味不明としか言いようがないし…。

オチだって、真犯人が予想通りアイリーンだったのは別に良いですけど、「彼女がどうやって犯行をしていたのか?」が一切説明されないのはどうかと、「フランシスは結局どういう役割を果たしていたのか?」とか「女性1人であの犯行が可能なのか?(死体遺棄が無理そう)」とか「殺人時のフィルムを警察に渡したのは誰なのか?」とか「そもそも犯行場所も相手も限られるんだから、警察が逮捕できたんじゃないの?」とか、もうツッコミどころがすさまじく多いワケです。

あと、同じアンソニー・ヒコックス監督の「ストーム・キャッチャー」を観た時にも感じたことですが、ユーモア要素を入れるところが微妙に間違っているというか。例えば、2番目の犠牲者の死体は頭がグチャグチャに潰れていて、ラングレンが「身元を隠すために犯人がやったのか…」とか言うと、エディが「いや、たまたま来た車が轢いて潰れた」みたいなことをそれまでの映画の雰囲気とは違う“ちょっと愉快な感じ”で言うワケです。僕的には「えっ、これはギャグなの?」と戸惑ってしまったり…。

最後の方でも、ラングレンは売春婦のメアリー(サンディ・ロス)の家に何度も押しかけていて、彼女の首を絞めたりとかやりたい放題なので、いい加減キレたメアリーは銃でラングレンを撃つんですね。すると、ラングレンは彼女をアッサリ射殺しちゃって。で、クライマックスで殺したクジャビアの死体を部屋に持ってきて、心中を偽装するんですが…。確かにこの2人は悪人だからこういう映画では死ぬのも仕方ないかもしれませんが、ラングレンがとぼけた表情で「ロミオとジュリエット?」とか言うと、エディが「その通り。悲恋の末の心中だ」なんておどけた感じで応えたりするのは、さすがに酷くて笑うどころか「ふざけんな!」というか。大体、くすぐろうとしただけで射殺されたフランシスは、結局、無実っぽいんですけど…。そのことを全然気にしない感じとかも心から不愉快でしたね。


微妙におどけた感じなのが本当にムカつきました。
ヤレヤレですな


そして、この映画の最大の失敗は、ラングレンにこの話の主人公は合わなかったということです。肉体派アクション俳優のイメージが強すぎて、全然弱そうに見えないのに弱いから、なんか間抜けに見えちゃうんですよね。例えばこれがブルース・ウィリスとかニコラス・ケイジとか竹中直人さんだったら普通に観られたと思うんですが…。SMシーンとか体を張って頑張ってただけに、ちょっと可哀相ですが、非常に無理があったのではないでしょうか。

ただ、ラングレン史の中ではかなり重要な作品という気はします。ラングレンが亀甲縛りで吊るされるのは実に貴重なシーンだし、オッパイの露出率もかなり高いし、ラストの余韻自体はそんなに悪くないので、興味がある人は観ても良いんじゃないですかね。




アンソニー・ヒコックス監督のカルト・ホラー。未見ですが、ちょっとだけ興味あったり。

テーマ : DVDで見た映画 - ジャンル : 映画

2011/06/22 22:54 | 映画(2010)TRACKBACK(0)  TOP

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