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恋の罪(ネタバレ)

恋の罪

恋の罪

2011/日本 上映時間144分
監督・脚本:園子温
出演:水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉、二階堂智、小林竜樹、五辻真吾、深水元基、町田マリー、岩松了、大方斐紗子、津田寛治
(あらすじ)
ある大雨の日、ラブホテル街にぽつんと建っているアパートで女性の死体が発見される。その事件を追う刑事の和子(水野美紀)は、幸せな家庭を持ちながらもずるずると愛人との関係を続けていた。彼女は捜査を進めるうちに、大学のエリート助教授美津子(冨樫真)や、売れっ子小説家の妻いずみ(神楽坂恵)の秘密を知ることになる。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




95点


※今回の記事は、非常に猥褻な単語が連発されているので、そういう文章が苦手な方は間違いなく読まない方が良いです。

「ねぇ、女性ってそうなの? (´Д`;) ドキドキ」って複雑な心境になりましたよ…。

僕にとって今年公開された「冷たい熱帯魚」は“理想の暴力犯罪絵巻”だったんですが、それを撮った園子温監督が今度は東電OL殺人事件をモチーフにした映画を作ったと聞いちゃったら、どうしても興味が湧いてしまうワケでして。公開してすぐにテアトル新宿に行ってきました。


こんな展示がありまして…。
マネキン展示

なんとフランクフルトが売ってました。やだ、露骨ぅ~(ギャル風に)。
フランクフルト販売


実際に観てみたら、要素を借りただけであって、東電OL殺人事件とは別物でして(監督自身もおっしゃってますが)。僕的にこの映画は、<エロくなろうとする女 川;´Д`)><すでにエロい女 川`∀´)><エロくなってしまった女 川´ω`)>の物語だと思いました…。って、たぶん「仮面ライダー アギト」を知らない人は分かりにくいだろうし、知ってる人も普通に「いや、全然上手い例えじゃないような…? (゚Д゚)ハァ?」と思う気がするんですが、とりあえず適当かつスピーディに感想を書き残しておきますね。


ここからの記述は、この曲をBGMにして読んでいただけると幸いです↓(ウソ)




<菊池いずみ/エロくなろうとする女 川;´Д`)>

何不自由のない生活を暮らしていたハズだったのに…。
貞淑な妻

神楽坂恵さんが演じる菊池いずみは、小説家(津田寛治)の妻であり、貞淑な女性。同じことを繰り返すだけの日々に物足りなさを感じて、スーパーで働き始めたら、そこでモデルプロダクションにスカウトされまして。若干の怪しさは感じたものの、久しぶりに「必要とされている」のがうれしくて、現場に行ってみたら、騙されてAVに出演させられてしまうという…。ううむ、こういうことって普通にあるから、みんな、気をつけて!ヽ(`Д´)ノ

いずみはその経験に嫌悪しつつも、「誰かに必要とされた」ことに喜びを覚えてしまったため、衝動的に見知らぬ男とセックスをするようになるんですが…。渋谷の円山町のラブホテル街で売春をしていた尾沢美津子(冨樫真)と出会って感銘を受けて、彼女のように「抱かれる時はお金をもらう!」というエロ修行を開始するんですね。

で、なんとなく精神的に満たされてきた…と思いきや! 美津子に言われてデリバリーヘルス店「魔女っ子クラブ」(ちなみに東電OL殺人事件の被害者が所属してたのは五反田の「魔女っ子宅配便」)で働くことになり、客が待つラブホに行ってみたら、そこには旦那がいましてね…。真面目でピュアで仕事熱心だと思っていた夫が、実は美津子に首を絞められながらセックスするのが大好きな変態だということが発覚! 精神崩壊寸前に追い込まれてしまい、美津子に「アタシを殺して!」と懇願されると、泣きながら彼女を絞殺しようとして失敗し、そのまま失踪。数々のゲンナリすぎる体験を経て、すっかり解放されてエロ魔人と化したいずみは、日本のどこかで売春をしながら生活し、最後は小学生男子たちに笑顔で放尿を見せてました。

最後はこんな感じに。セックス中に相手のこんな表情を見ちゃったら、一気に萎えると思う。
こんな感じに…

神楽坂恵さんはとにかく素晴らしかったですね~。最初の方の“貞淑な妻”演技は微妙に感じるところもあったんですけど、話が進むうちにドンドン魅力的になって行って、全裸での「いらっしゃいませ!」には爆笑。実演販売するソーセージが大きくなっていくのも良かったです。そして、最後のカットの変化っぷりには本当に驚きました。この不況の日本において、景気の良い脱ぎっぷりを見せてくれたのも実にありがたかったですな。もう、100点!ヽ(`Д´)ノ


<尾沢美津子/すでにエロい女 川`∀´)>

普段は利発的な女性って感じなんですが…。
昼は大学教授で

冨樫真さん演じる尾沢美津子は大学助教授なんですけど、夜は渋谷の円山町で立ちんぼ(路上に立って、売春をする人のこと)として活動したり、「魔女っ子クラブ」で働いていたりするという、東電OL殺人事件の被害者を意識したキャラクター(家庭環境やファザコンという設定もモロな感じ)。登場時、すでにエロい女として完成されていた美津子ですが、実は彼女もナチュラル・ボーン・エロ魔人というワケではなく。ファザコンをこじらせた&そのことで嫉妬して父親を嘲る母・志津(大方斐紗子)とのハードすぎる対立により、母への当て付け+自傷行為として売春を始めたんですね。

夜になるといろいろな意味でスゴい女性に変身! 実写版「妖怪人間ベム」のベラ役は彼女がピッタリだった気がする。
夜はベラ様に

美津子は、最愛の父親も死んでしまっているということで、“永遠に手に入らない愛=城”を求めて円山町を彷徨っていたら、偶然、いずみと遭遇。彼女に“いつかの自分”を重ねてしまい、師匠として「愛のないセックスには金を介在させる」ということを教えて、地獄の底まで導いていくワケです。最終的には「母親に殺される→バラバラにされて、父親が描いていた絵のようにマネキンと接合される」んですが、結局、死ぬ以外に救われなかったんでしょうな…(母親が娘を殺したのは単なる憎悪だけじゃなかった気がする)。ちなみに、僕的には「いずみの夫が自分の客だった」という事実を教えたのは、決して意地悪なだけでなく、文字通り「すべてをいずみに伝えたかったから」だと思うんですが…どうなんでしょうか(結果、いずみは解放されたワケだし)。

何はともあれ、僕は冨樫真という女優さんを知りませんでしたけど、非常に素晴らしかったですよ。とにかく迫力がありました。予告編にもあった母親との朗らかで下品な罵り合いは映画史に残る名シーンではないでしょうか(大方斐紗子さんも最高すぎ!)。惜しみなく裸体をさらす姿勢も評価したいところです。オッパイが小さいのも僕好みということで、やっぱり100点!ヽ(`Д´)ノ


<吉田和子/エロくなってしまった女 川´ω`)>

有能そうな女性刑事なんですが…。
人妻刑事は…

水野美紀さんが演じる吉田和子は、渋谷で発生したバラバラ殺人事件を捜査する人妻刑事。捜査線上に浮上した2人の女を調べていくうちに、“満ち足りた生活を送っているハズなのに不倫をしている自分”を重ね合わせちゃったりして。しかも、その不倫相手に「ビッチ」と罵られて興奮したり、「オナニーしろ」と言われて従ったりと、かなりMっぽい人だったりするという。

「彼女の見事な推理のおかげで事件が解決しました (・∀・)」という気持ち良い展開はなくて、彼女は基本的には狂言回しでしかないんだけど、観客が投影しやすいキャラクターにもなってるんですよ。家庭を大事に思っているハズなのに、エスカレートするSM的な関係に興奮したりとエロくなっていく一方で、彼女自身、「そんな自分が分からないのYO!ヽ川`Д´)ノ」って感じ。そんな彼女を観た僕的には、かなり「ああん、その気持ち分かるぅ~ (´Д`;)」と思ったりするんですね。

いや、ハッキリ言って、「オレってリア充だぜぇ~!ヘ(゚∀゚*)ノホエホエ!」という人だって、結局、“何か”に満たされていないから、必要以上にお金を集めたり、多くの女性と付き合ったりするワケでさ。で、その“何か”は誰にも分からなくて、自分の中からなくなることもなくて、僕らは一生“何か”と折り合いを付けて生きて行かざるを得ないじゃないですか、たぶん。僕はこの「“何か”を求める行為=恋」だから「恋の罪」というタイトルになったんじゃないかと。

だから、最後、劇中で語られたエピソードのように、和子がゴミ収集車を追い続けていたら、気が付くと円山町にまで来てしまってて、電話で不倫相手に「どこにいる?」と訊かれて「わからん 川´ω`)」と答えたところで映画は終わるんですが…。いずみや美津子の心情は極端すぎて理解できなくても、「その時の和子の気持ちなら分かる」というか。この映画で描かれている内容は恐ろしく極端なんですけど、それらが誰にも起こりうるということを観客に伝える見事なキャラクターだと思いました。

自分で自分が分からない…。そういうことって、ありますよね。
わからなくなってきました

ちなみに話題になってる水野美紀さんのヌードですが…。映画が始まると「和子がシャワーを浴びながらセックスをしている→携帯が鳴る→部屋に携帯を取りに行く」という流れで、携帯を取りに行く際に水野美紀さんの全裸が観られるんですね。そして、それ以降は自慰行為のシーンはあっても裸にはならないんですが…このサラッとした使い方が実に素晴らしかった! やっぱり水野美紀さんの知名度は大きいから、これ見よがしな使われ方をされたり、ヌードシーンが多かったりしたら、映画として他の要素が曇ってしまったと思うんですよ。「ヌードです!(`・ω・´)キリッ」みたいなのも良いんですけど、「お風呂に入ってたんだから、そりゃあ裸になってますよ ┐(´ー`)┌ヤレヤレ」的な見せ方こそ女優というかさ。水野美紀さんのその姿勢には心底感謝したいということで、当然ながら100点!ヽ(`Д´)ノ


ということで、案の定、「アギト」の例えは1ミリも上手くなかったですな… ('A`) まぁ、他の役者さんも全員素晴らしいんですが、誰もが思うと思うんですけど、特に大方斐紗子さんは最高としか言いようがありませんでした。それと、和子の不倫相手を演じた児嶋一哉さんもイヤ~な奴を好演してましたね。役者さんのチョイスといい、演出といい、園子温監督はスゴいですな。


美津子との罵り合いは何度でも観たいくらい素敵。場内は大爆笑でした。
怖いお母さん

児嶋さんは本人が憎くなるくらいマジでムカつきましたね。
イヤな奴


その他、どうでも良いことを書いておくと、この映画は女性賛歌だと思ったりもして。最後、いずみは小学生に放尿を見せるような人になっちゃいましたけど(このシーンの撮影はどうやったんですかね?)、僕は「どんな女性にも事情はある」ってことを描いたのではないかと。「言葉なんか覚えるんじゃなかった」という田村隆一の「帰途」という詩が劇中何度も出てきますけど、彼女は「覚えた」ことで地獄を見たのは確かですが、あの解放された表情を観ると「覚えて良かった」ワケでさ。良識ぶった僕らからすれば「堕ちた」ように見えることでも、そこにいる本人は全然納得してその場所にいるんだから、舐めるなよと。…って、ごめんなさい、上手く説明できないや (ノ∀`)テヘ

って、ベタ褒め状態ですけど、気になるところもあって。美津子の遺体がマネキンと接合された経緯が明らかになってみると、引っ張った割には強引すぎて乗れなかったです。実はヘタレな性格のカオル(小林竜樹)が志津に言われるままにバラバラにしたりした後、後悔して自殺した…ってことなのかもしれないけど、やっぱりカオルが協力するのは無理がある気がするし、死体をあんな風にマネキンと細工する必要がないような(バラバラにする&性器を切除する程度で良くない?)。

あと、風俗描写全般。例えば、僕は決して詳しいワケではありませんけど、あの当時にデリバリーヘルスという名称の風俗は確かほぼ存在しないというか、ホテルでセックスする商売はホテルトルコ=ホテトルだったワケでして。ホテトルに関しては「東電OL殺人事件」にも載っているので、監督が「ホテトルだと若い人には意味不明だから」と、あえて“デリヘル”ということにしたのは分かるんですよ。ただ、僕は決して詳しいワケではありませんけど、本番をウリにするお店もあるようですが、デリヘルは基本的に「セックスはしない」のが前提の商売なんですね。だから、ああいう「セックス上等!」みたいな描き方をするのは、デリヘル業界にとって迷惑だと思ったりしましたけどどうでも良いことですかねダラダラとすみません…。

ううむ、例によって短く書くつもりが長文になっちゃいましたけど、僕的にはね、面白いシーンが多かったし、素敵な女性たちの裸も観られるし、いろいろ考えさせられるのも愉快ということでね、非常に観て良かったと思うんですよ。ただ、一番気になっているのが、「女性ってそうなの? (´Д`;) ドキドキ」という点。やっぱり園子温監督は男性ですから、どんなに女性の気持ちになって作ったとしても、究極のところは分からないじゃないですか。僕も「和子の気持ちが分かる」とは書いたけど、それは「満たされない気持ちの部分」であって、例えば「『ビッチ』と言われてゾクゾクする女性って本当にいるのかしら?」って思っちゃうというか、僕のところによく届く「34歳の未亡人です。お金が余っているのでセックスしてください」というメールと同じようなSFチックな話に感じちゃうんだけど、「もし本当だったら…?」と思うとソワソワしてくるというか…。だから、この映画を観た女性は、ぜひ自分自身と照らし合わせて、赤裸々な心情を綴った感想文を書いてほしい。そんな風に思う冬の午後でした(ミルクティを飲みながらーー)。




園子温監督作。僕の感想はこんな感じ



ノベライズ。未読ですが、映画の補完に良さそうですな。



佐野眞一氏によるノンフィクション。容疑者の描写が多い感じ。



桐野夏生先生の小説。東電OL殺人事件を独自の解釈で描いております。

テーマ : 映画感想 - ジャンル : 映画

2011/11/20 12:46 | 映画(2011)TRACKBACK(0)  TOP

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