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ドッグマン(ネタバレ)

ドッグマン


ドッグマン

 原題:Dogman
2018/イタリア、フランス 上映時間103分 
監督・製作・原案・脚本:マッテオ・ガローネ
製作:ジャン・ラバディ、ジェレミー・トーマス、パオロ・デル・ブロッコ
製作総指揮:アレッシオ・ラッツァレスキ
原案・脚本:ウーゴ・キーティ、マッシモ・ガウディオソ
脚本:マルリツィオ・ブラウッチ
撮影:ニコライ・ブルーエル
美術:ディミトリー・カプアーニ 
衣装:マッシモ・カンティーニ・パリーニ
編集:マルコ・スポレンティーニ
音楽:ミケーレ・ブラガ
出演:マルチェロ・フォンテ、エドアルド・ペーシェ、ヌンツィア・スキャーノ、アダモ・ディオニージ、フランチェスコ・アクアローリ、アリダ・バルダリ・カラブリア、ジャンルカ・ゴビ
パンフレット:★★★(700円/3本のコラムはどれも面白かったし、「モデルになった事件」について書いてあったのが良かった!)
(あらすじ)
イタリアのさびれた海辺の町。娘と犬を愛する温厚で小心者の男マルチェロ(マルチェロ・フォンテ)は、「ドッグマン」という犬のトリミングサロンを経営している。気のおけない仲間たちと食事やサッカーを楽しむマルチェロだったが、その一方で暴力的な友人シモーネ(エドアルド・ペーシェ)に利用され、従属的な関係から抜け出せずにいた。そんなある日、シモーネから持ちかけられた儲け話を断りきれず片棒を担ぐ羽目になったマルチェロは、その代償として仲間たちの信用とサロンの顧客を失ってしまう。娘とも自由に会えなくなったマルチェロは、平穏だった日常を取り戻すべくある行動に出る。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓

  


  80点


※今回の記事は、「子供の王国」「子供の情景」収録)のネタバレに触れているんですが、本当に厭な気持ちになる短編なので、読んでおいて!
※今回の記事は、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のネタバレに触れているので、気をつけて!
 ※今回の記事は、グロい文章が垂れ流されているので、そういうのが苦手な人は読まないで!

あの「ゴモラ」のマッテオ・ガローネ監督によるバイオレンス映画となれば興味が湧くし、もともと観る予定だった「ロケットマン」と一緒に「マン映画」繋がりで同じ日に更新するのもいいな…なんて超どうでもいいことを考えたりしたんですが、しかし。「暴力的な友人に人生をメチャクチャにされる→復讐する話」となると、前半の「人生をメチャクチャにされる」部分が相当キツそうだと思って、あまり観る気がしなかったんですよ。ところが、愛聴してるラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になったということで、9月11日(水)、ヒューマントラストシネマ渋谷に足を運んできました(その後、新宿で「トリプル・スレット」「サマー・オブ・84」をハシゴ)。案の定、キツかったです… ('A`) ゲンナリ 


コラボホットドッグ(なかなか美味!)を食べながら鑑賞。観客は20人ぐらいだったような。
ドッグマンを観た時のgif


ストーリーは上記のあらすじの通りというか。お話の舞台は「バットマンのいないゴッサムシティ」(パンフ情報)と言われるイタリア南部のコッポラ村(「ゴモラ」の舞台でもあるそうな)。そこで犬のトリミングサロン「ドッグマン」を経営しているマルチェロは、仲間とサッカーを楽しんだり、娘と過ごしたりすることを楽しむ小市民だったものの、彼には“ジャイアニズムを体現する悪友”シモーネがいましてね。シモーネは近隣住人が殺害計画を立てようとするほど超迷惑な男でして(ヤクザの世界だったらヤクネタと言われそうなタイプ)。マルチェロはそんな彼と、例えば「窃盗の運転手を無理矢理手伝わされるも報酬は微々たるもの」といった「メリットがゼロではないけど、プラスマイナスするとマイナスの方がはるかに多い」という関係性だったんですが…。ある日、シモーネが「マルチェロの店の壁を壊して、隣りのフランコの店に盗みに入る→店のカギを貸せ!」という「お前、バカなの?(゚⊿゚) ホンキ?」と言わざるを得ない驚くほど雑な窃盗プランを立ててきたので、当然ながらマルチェロは断るも、脅されると断り切れずに店のカギを渡してしまうのです。


トリミングサロンを経営するマルチェロは犬を心から愛してまして。トリマー&経営者としてもなかなかの男。
犬を愛する男

そして、(たぶん)離婚した妻が養育している娘とたまに会うのが何よりの楽しみなんですが…。
娘と過ごすマルチェロ

悪友シモーネが悩みのタネ。雑な窃盗計画でも断り切れないというね (´・ω・`) ウーン
シモーネに脅されるマルチェロ

マルチェロが店のカギを渡した瞬間、観客の多くがこの愚地独歩気分になったのでした(「グラップラー刃牙」より)。
地獄だな...ここから先は


シモーネは窃盗計画を実行するんですけど、店のカギを使って扉を閉めて逃走したため、「カギを持っている奴が犯人」ということになって、マルチェロがスムースに逮捕されましてね (・∀・) ソリャソーダ 警察は誰の仕業なのがわかっているので、司法取引を持ちかけられるんですが、マルチェロは黙秘を貫いて、シモーネを売ることなく1年服役。案の定、サッカー仲間たちからはクソ野郎認定されて相手にされなくなるという地獄絵図というね。しかも、なんとシモーネったら分け前をくれないだけでなく、感謝も謝罪もせずに逆ギレして暴力を振るってきたから、久しぶりに…キレちまったよ…。マルチェロはコカインで機嫌をとる→ニセの儲け話を提案→騙して大型犬の檻に閉じ込めると謝罪を要求するも、シモーネったら持ち前の腕力で脱出しようとしたので、いろいろあって絞殺! シモーネの死体を燃やすために原っぱに運んだマルチェロは、サッカー仲間の幻影を見たりした後、途方に暮れるのでしたーー ('A`)


マルチェロがシモーネを檻に誘導する本編動画を貼っておきますね↓




まぁ、厭な映画であることは大前提として、スゲー面白かったです。正直、鑑賞前は「人生をメチャクチャにされる前半部はキツいながらも、後半の復讐パートは留飲が下がるんだろうな」なんて安易に予想していたんですが、そんなことはなく。カタルシスも救いもないラストも含めて、なかなか現実的な映画だった印象。もうね、僕的に恐ろしかったのが「マルチェロとシモーネの関係性の描き方」で、一方的な搾取が行われるのではなく、例えばクラブではシモーネのおかげでマルチェロも楽しい思いをしたりとか、微かな友情が存在したことがリアルだなぁと。そのおかげで単なる「復讐エンタメ」ではなく(それはそれで大好物ですがー)、普遍的な「人間関係の映画」になっていたと思います。ただ、もちろんシモーネが与えてくれる「楽しい思い」なんて「おこぼれ」レベルでしかなくて(「アメとムチ」で例えるなら、ミルキーを1粒もらった後にイバラの鞭で10回しばかれる感じ)。その程度の関係性でシモーネがピンチの時はつい助けてしまうマルチェロを見ていると、「七つの会議」の野村萬斎さんライクに「まるで…犬だな… (`Δ´;)」と思わされちゃうあたり、マッテオ・ガローネ監督、人間の厭な部分を上手く切り取るなぁと、感心いたしました。


「一応、楽しい時間もある」ということを描いているあたりがリアルだと思いましたよ。
楽しい時間もあった


シモーネ役のために粗暴な巨漢に肉体改造したエドアルド・ペーシェもスゴいんですが(前の写真を見て!)、やっぱり本作の白眉は主演のマルチェロ・フォンテですよね。善良だけど気弱で少しは小狡さもある普通の小市民を見事に体現していたし、その小柄な肉体がまたシモーネの巨漢振りを際立たせていたし、ラストカットの心許なさとか最高だったし、そりゃあいろいろな主演男優賞を受賞するのも納得ですよ。その他、序盤にマルチェロが狂暴な犬をしつける様子を描いて後半の展開を暗示しているのは上手いと思ったし(パンフによると、普段は超大人しい犬で、あの狂暴さは演技なんだとか。スゴイね!)、クライマックスも「自分の能力を駆使して敵を倒す」と捉えればヒーロー映画を皮肉っているっぽくてユニークだし、シモーネの幼児性&無神経さの象徴として赤いバイクを走らせる演出は酷すぎて笑ったし、刑務所シーンでクローズグリップでの懸垂している受刑者がいたのはうれしかったですね〜。


意味合いは違いますが、本作のラストは「子供の王国」のこのコマを思い出しましたよ(「子供の情景」より)。 
遊ぼうよ


って、ベタ褒めですが、1点だけ大きな不満がありましてね。パンフによると、本作は1988年2月にローマ南西のマッリャーナ地区で発生した「マッリャーナの犬屋事件」を元に作ったそうで。ドッグシッターのピエトロ・デ・ネグリ(Pietro De Negri/事件後に「エルカナロ(犬の警官)」という異名がついた)が元アマチュアボクサーのジャンカルロ・リッチ(当時27歳)を殺害した事件で、基本的な事件の流れや人物の関係性などはそのままっぽいんですけど、ピエトロが自供した殺害の経緯が凄まじいのです。Wikipediaこちらのサイトをグーグル翻訳してから勝手に要約すると、即死しないように7時間かけて拷問。指を切断したり、その切断した指で目を刺したり、2本ほど自分のアナルに挿入してみたり、耳や鼻を削いだり、パイプレンチで歯を砕いたり、火で炙ったり…とやりたい放題であり(その間、娘を学校に送り迎えしてる!)、挙げ句の果てにはペニスを切り取って口に入れて窒息死させてから頭蓋を割って脳を犬のシャンプーで洗ったというのだから、何が何やらですよ(微笑)。もうね、できればそれらの拷問シーンを再現してほしかったなぁと。ただ、検屍の結果、実際にはハンマーで頭部を殴打して40分以内に殺害していて、指を切断したといった供述のほとんどはピエトロがコカインの過剰摂取のせいで見た幻覚のようだし(こちらのサイトによると、被害者を檻にも入れていないっぽいし冤罪説もあるっぽい?)、作品としては相当安っぽくなりそうですがー(パンフの岡本太郎さんのコラムによると「憤怒 エル・カッナーロ」という映画で描かれているそうな)。それか、もっとド直球に「犬を使って倒す」とか見たかったです(「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のクリフ・ブースのように)。


ピエトロ・デ・ネグリとジャンカルロ・リッチ。ピエトロは17年間服役して、現在は妻子と暮らしているそうな。
ピエトロ・デ・ネグリとジャンカルロ・リッチ


そんなワケで、スゲー面白かったものの、とても厭な“人間関係の映画”でしたねぇ… ('A`) ゲンナリ 本作のマルチェロとシモーネみたいな「暴力が人間関係に介在するストレートな恐ろしさ」って、一番見かけた&体験したのは中高時代だけど、こういうのって社会に出ても大なり小なりあったりするワケで。いくら「良い思い出」があったとしても、どんなに偉い人だろうと、自分を尊重してくれない人と無理に付き合う必要はないのでね、もしそんな状況下にある人はさっさと逃げ出した方が良いザンス…なんて知った風な口を叩いて、この駄文を終えたいと思います (・ε・) オシマイ




マッテオ・ガローネ監督の前作。ちょっと観たい。


初めて観たマッテオ・ガローネ監督作。僕の感想はこんな感じ
 


アメリカでベストセラーになった絵本だそうです。



検索したら引っ掛かったホラー漫画。普通に怖そうですな(ストレートな文章)。


「なぜこんなものが… (`Δ´;)」と思ったレゴ。人気キャラなんですかね。









2019/09/20 10:30 | 映画(2019)TRACKBACK(0)  TOP

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